大学を卒業してから5年ほど大阪の製薬会社で働いていました。二上山のふもとにアパートを借り、近鉄南大阪線で二上山駅から職場に通っていました。仕事は薬の分子構造式をいろいろ変えて新しい薬を合成する仕事だったので、化学の嫌いな私にしてはなかなか面白かったです。
このころ二上山には都市伝説のような不思議な出来事が起こるといろいろな噂が立っていました。私も一度不思議なことに遭遇したのでお話ししようと思います。ただし真偽は確かめようがないので質問には一切答えられません。
ある日、同僚達と酒を飲んで帰宅しようと電車に乗ったものの、その電車は最終便で二上山駅の手前の駅が終着でした。その駅から二上山駅まではかなりの距離で歩けば1時間以上あります。タクシーはなく、仕方がないので線路に沿って歩き出し鉄橋に差し掛かった時、疲れたので少し休もうと思った時でした。突然頭上がうすぼんやり明るくなり、見上げると大きな光体が浮かんでいました。私は同僚たちとかなり酒を飲んでいたので酔っぱらって幻覚を見ているのだろうと思っていました。しばらく私の頭上で止まっていた物体は、酔っ払いを相手にしても仕方がない、と思ったのか突然真横に猛スピードで動き出し、二上山の方へ飛んでいきました。酔った頭で不思議なこともあるものだと感じたのを覚えています。それからまたゆっくり自宅へ向かって歩き出し、何故かわかりませんが今日のことは忘れてしまおうと思い自宅に着くや否や何も考えず寝てしまったのです。
翌日、社長や常務の前で新薬の経過報告をする会議に遅刻し、かなり説教され私の昇進は先延ばしになったのです。
信じるか信じないかはあなた次第です・・・
夏の野の 繁みに咲ける 姫百合の
知らえぬ恋は 苦しきものそ